教員の給料まとめ!時給と残業代を計算!総務&文科省データ参照
教員は適切な残業代が払われないブラックであることは、もはや有名ですね。
定額働かせ放題とも言われています。
今回は、教員の給料に関するデータを参考にして、教員の残業代を計算します!!
最後には、勤続年数ごとの『残業代シミュレーション』を載せましたので、是非、ご自身の残業代を試算してみてください。
教員の給料について
まずは、教員の給料についてです。諸手当が含まれている給与ではありません。基本給と呼ばれる部分です。
総務省による『地方公務員給与実態調査』によると、地方公務員(教育職)の平均給与月額は
- 高等学校教育職 ⇒ 372,405 円/月 ※平均年齢44.8歳
- 小中学校教育職 ⇒ 353,393 円/月 ※平均年齢42.1歳
となっています。
ここで、
- 高等学校教育職とは、特別支援学校、専修・各種学校の教員含む。
- 小中学校教育職とは、幼稚園の教員含む。
とされています。
「あれ?高校教員の方が給与が高いんじゃなかったっけ?」と疑問に思いました。
調べてみると、昔は高校に通う子どもが少なく、高校は専門的な知識を教える場所という認識だったため、給与が小中学校より高く設定されていたようです。
しかし、近年では、ほとんどの子どもが高校まで通うようになり、小中高の格差が狭まったため、教員同士の給与の格差も狭まっていることを知りました。
高校教員の平均年収と調べると、小中教員より高い金額が提示されますが、そこには、小中よりも高い給与をもらっていた年配の世代の年収も含まれています。高年収の年配の高校教員が退職されることで、今後、小中高の給与の格差はどんどん小さくなっていくだろうという見解が得られました。
教員の時給を計算
教員の所定勤務時間は7時間45分(7.75時間)と定められています。
1カ月の出勤日数が20日と仮定すると
- 月の勤務時間 = 7.75 × 20 = 149 時間 です。
時給 = 平均給与月額 ÷ 月の勤務時間 なので
- 高校 ⇒ 372,405 ÷ 149 = 2,499 円/h
- 小中 ⇒ 353,393 ÷ 149 = 2,372 円/h
と計算できました。
残業中の時給
さあ、皆さんが気になる教員の残業代についてです!
残業中の時給から計算します。
労働基準法では、
- 時間外労働 = 時給 × 1.25(割増率)
と定められています。
よって教員の残業代をおおまかに計算すると、
- 高校 ⇒ 2,499 × 1.25 = 3,124 円/h
- 小中 ⇒ 2,372 × 1.25 = 2,965 円/h
となりました!
労働基準法では、その他にも
- 1カ月60時間を超えた場合に、割増率が25%⇒50%
- 午後10時から午前5時までの深夜労働は、割増率+25%
- 休日労働は、割増率+35%(1日8時間を超えても時間外労働25%はなし)
などがありますが、今回は考慮しないものとします。
本当に教員に残業代が支給されるとしたら、上で計算した以上の残業代がもらえます・・・!
月間・年間の残業代を計算
残業代の時給が計算できたので、月間・年間の残業代を計算します!
残業時間は、先生方によってバラバラだと思いますが、
- 教員時代の私の残業時間
- 周りの先生たちの出退勤
- 持ち帰りで仕事をしている先生の多さ
- 土日出勤している先生の多さ
- 教員関係者の話
など、私の経験をもとに考えて、一人当たりの平均残業時間を 80時間 /月 と仮定します。
80時間は過労死ラインでもあるので、人間が耐えられるギリギリの数字にしておきました。
もちろん残業時間が過労死ラインを遥かに超えた(人間の限界さえ超えた)、神のような先生方が多くいることは承知です。ここでは80時間と仮定することをお許しください。
よって月間の残業代は
- 高校 ⇒ 3,124 円/h × 80 = 249,936 円/月
- 小中 ⇒ 2,965 円/h × 80 = 237,177 円/月
年間の残業代は
- 高校 ⇒ 249,936 円/月 × 12 = 2,999,235 円/年
- 小中 ⇒ 237,177 円/月 × 12 = 2,846,118 円/年
と計算できました。
幻の残業代は、月間24万、年間290万・・・!
こんなにもらえるはずなんですね・・・
教職調整額について
「教員は残業代出ないけど、代わりに給料にプラスされているんでしょ!」というアレです。何もしなくても事前に給与に反映されていて、もちろん、ありがたいんですけど・・・
教員が頂いている教職調整額について計算してみます。
- 教職調整額 = 月額給料の4% なので
教職調整額の平均は、
- 高校 ⇒ 372,405 × 0.04 = 14,896 円/月
- 小中 ⇒ 353,393 × 0.04 = 14,136 円/月
これらの教職調整額は、何時間分の労働の対価なのか考えると、
月の労働時間(1日7.75時間×出勤日数20日と仮定)の4%なので
- 7.75 × 20 × 0.04 = 5.96 時間
つまり、教職調整額は、月6時間の労働を考慮して、約1,4000円支給されていることが分かりました。
もし、残業時間が、月6時間未満の先生がいるとしたら、
「給料もらいすぎ!」「税金泥棒!」と言ってやりましょう!
あ、でも、教員は休憩時間(45分/日)が潰されるのが当たり前なので
- 月間の休憩潰し労働時間 = 45 分 × 20 日 = 900 分 = 15 時間
月15時間は、全教員が強制的に残業させられているんですよね。
全教員の残業代の総額
ラストスパートです!
全教員に適切な残業代を払うとしたら、どれだけの財源が必要になるのでしょうか。
国公立の「教愉」の人数を、文科省の『文部科学統計要覧』から参照します。
※教諭なので、校長、教頭、養護教諭、講師さんなどを除いた人数です。
- 高校(特支含む) ⇒ 209,742 人
- 小中(幼含む) ⇒ 334,422 人
一人当たり平均の年間の残業代は以下の通りでした。
- 高校 ⇒ 2,999,235 円/年
- 小中 ⇒ 2,846,118 円/年
よって、教諭の残業代の総額は
- 高校 ⇒ 2,999,235 円 × 209,742 人 = 629,065,526,255 円/年
- 小中 ⇒ 2,846,118 円 × 334,422 人 = 951,804,514,196 円/年
これらをたすと 1,580,870,040,451 円!!!
年間1兆5800億円 です!!
所得税の計算をすると
課税される所得金額が330万~695万の場合、税率は20%です。実際に支払われる残業代は1兆5800億円の80%になるため、
- 全教員の残業代(所得税20%カット)= 1,264,696,032,361 円
となり、年間1兆2600億円 だと計算できました。
国公立「幼少中高の教員」の残業代を払うとすると、年間1兆2600億円 以上の財源が必要になるのですね。増税待ったなしです。
ちなみに、国税庁HPによると、国の歳出総額は約107兆円。
公立の小・中学校の教員の給与などを負担している「義務教育費国庫負担金」に1兆5164億円(歳出全体の1.45%)使われていることが分かりました。
元の1兆5164億円に対して、残業代の1兆2600億円は何%の増加になるか計算すると、
- 1兆2600億 ÷ 1兆5164億 = 0.818( ⇒ 約82%)
つまり、教員の残業代を払うためには、元の財源の 1.82倍 の財源を確保しなければなりません。やはり増税待ったなしです。
【まとめ】
- 教員の時給は2,372円、残業の時給は2,965円
- 教員の残業代は、月間237,177円、年間2,846,118円
- 幼小中高の教諭全員に適切な残業代を払うのに必要な金額は年間1兆2600億円以上
※時給と残業代は、小学校教員(平均年齢42.1歳)が月80時間残業した場合で示しています。
これだけのお金が関わっています。
残業代の財源を確保できず、教員に残業代を払えないのであれば、所定の勤務時間に収まるまで業務量を減らすべきなのです。
残業代の支払い or 業務の削減(残業なし、所定の勤務時間に収まるまで!)
おまけ 教員の『時給&残業シミュレータ―』
- 時給シミュレーター = 1350 + 50×勤続年数 円/h
- 残業時給シミュレータ― = 1700 + 60×勤続年数 円/h
※給料は自治体によって異なるため、実際の時給と差が出ることをご了承ください。
「時給いくらだ~」と計算して頂いたり、残業時給と残業時間から「残業代、本当はこんなにもらえるはずなんだぜ~」と話のネタにしていただけたら幸いです。
↓ 計算式はこちらの記事で紹介しています!
ブラックな働き方の中でも、一生懸命に励んでくださっている先生方には、感謝するばかりです。子どもも、保護者も、社会全体も、先生たちの頑張りに支えられています。
「子どものため」という魔法の言葉(悪魔の言葉)で先生方に無償の労働を強いている社会のままで、今後も教育現場が成り立つでしょうか。真に子どもの成長を願うなら、先生方の働き方改革をする以外に方法はないと思うのです。
私は教員として働く中で、人として尊敬できる素敵な先生方との出会いに恵まれました。先生方への感謝・尊敬の気持ちと、先生方の頑張りが正当に報われてほしいという思いは、教員を退職した今も変わりません。
先生の働き方が改善することを願っています。